OWLIFTの保護窓の研究

小型サーマルカメラOWLIFTは内蔵している赤外線センサモジュールの外側に保護窓を付けていません。そのため、防水・防塵の対策ができていないのがOWLIFTの弱点の一つです。これを改善したく研究を進めていますが、遠赤外線カメラの一般的な保護窓に使用される材料であるゲルマニウムやカルコゲナイドは、OWLIFTの価格帯で用いるには少々高価なので、別の材料を探していました。保護窓の材料として求められるのは、遠赤外線の透過率が高く、反射率が低いことです。身近な樹脂で試したところ、比較的良い結果が得られる材質がありました。

以下素材の実験をしました。なお、実験対象の材料は簡単に手に入り、材質がわかるものを手当たり次第に集めたので、厚みにバラツキがあります。

  • PS (ポリスチレン) 0.5mm
  • PP(ポリプロピレン) 0.75mm
  • PET(ポリエチレンテレフタレート) 0.25m
  • PVC(塩化ビニル) 0.2mm
  • POLYSAME(ポリセーム) 0.2mm ... POLYSAME ・ポリセームは 積水成型工業株式会社の商標です
自作実験機
実験装置

実験装置は手作りしました。黒体スプレーで塗装したPTCヒータの上に文字型に切ったアルミホイルを置きました。塗装部分とアルミホイルで放射率が異なるため、サーマルカメラで撮影すると文字型が見えます。

保護材無し
そのまま撮影

何も乗せずにOWLIFTで撮影するとこのようになります。この上に実験対象の素材を乗せてOWLIFTで撮影してみます。

実験結果

PS(ポリスチレン) 0.5mm

ほとんど透過しません。

PS(ポリスチレン) 0.5mm

PP(ポリプロピレン) 0.75mm

これもほとんど透過しません。板厚が0.75と、少々分厚いせいもあると思います。

PP(ポリプロピレン) 0.75mm

PET(ポリエチレンテレフタラート)0.25mm

微妙に透過しています。ちなみに購入時の表示では板厚が0.2mmでしたが、実際に測定したところ0.25mmでした。また、少々気泡が混入している材料でした。

PET(ポリエチレンテレフタラート)0.25mm

PVC(塩化ビニル) 0.2mm

PETよりも透過しています。

PVC(塩化ビニル) 0.2mm

POLYSAME(ポリセーム) 0.2mm

他と比較するとかなり透過しています。

POLYSAME(ポリセーム) 0.2mm

今回の実験ではポリセームが良い成績でした。透過した赤外線の強度は弱くなっているので、温度を取得するには補正する必要があります。また、画像上では判断できませんが、ほとんどの窓材では、OWLIFT本体の熱が窓材に反射して画像に映り込みます。次は窓材を通した後の温度出力の精度を高める方法を研究したいと思います。